玄人/くろうと

玄人(くろうと) 意味・使い方・例文・類義語・対義語・ビジネス wordia

「玄人」とは、技芸などに習熟した人、その分野の専門家、あるいは職業としているスペシャリストを指します。読み方が独特なので意味がつかみにくい言葉ですが、ここでは読み方から意味、使い方や類義語、対義語も紹介していきます。

「玄人」の正しい読み方

「玄人」の正しい読み方は「くろうと」

「玄人」の正しい読み方は「くろうと」です。特殊な読み方をする熟語なので初見で「くろうと」と読むのは至難の業です。「玄人」が、なぜ「くろうと」と読むかと言うと、熟字訓(じゅくじくん)という特殊な言葉だからです。

単体の言葉ずつを読むのではなく、2つ以上の言葉を合わせた熟語(熟字)に意味が込められています。例を挙げると、「田舎(いなか)」や「時雨(しぐれ)」が熟字訓に当たります。どれも意味は分かりますが、単体ではこのような読み方はしません。熟語を合わせた言葉だからこその特殊な読み方をしています。

ただ読み方を覚えてしまえば、迷うこともありませんし、日本語特有の言葉として外国の方にも説明できます。ぜひ覚えていきましょう! のちほど「玄人」の英語表現も併せてご紹介します。

「玄人」の意味

「玄人」の本来の意味としては、伎芸や技芸を磨き抜いた人を指す言葉であり、経験を重視した言葉でした。伎芸は音楽や舞を意味し、技芸は演芸を意味しています。主に芸者や職人に向けられた言葉でした。

現在では、本来の意味とは認識が違うものの、分野に特化した人物という意味で「玄人」という言葉が使われています。時代とともに変化した言葉と言っても過言ではありません。

また、「玄人」と聞くと、年齢を重ねた人を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし、意味と年齢は全くの無関係であり、重視されているのは経験です。そのため、若い人物であっても「玄人」と呼ぶに相応しい人がいてもおかしくありません。

「バイニン」の読み方は造語

おもに麻雀で日銭を稼ぐ行為に対して「玄人」と表記の上、「バイニン」と読むことがあります。この「バイニン」という読み方は造語です。麻雀漫画である「哲也-雀聖と呼ばれた男」にて、「バイニン」という言葉が登場したことで広まりました。

「玄人」が「バイニン」として呼ばれる理由としては、麻雀で稼ぐ商売人とイカサマ術を磨くところからきています。イカサマとは、簡単に言うとルール違反やズルのことですが、賭け事には現行犯でバレなければイカサマではないという暗黙の了解があります。そのため、賭け麻雀で稼ぐ人はイカサマがバレないように技術を磨くことから「玄人」と言われます。

また、「玄人」を「バイニン」と読む理由は、賭け麻雀で稼ぐ人を「商売人」と呼ぶからです。「商売人」は、イカサマ術に長けていることから「玄人」を重ねて「バイニン」と読む形となっています。元々、麻雀は隠語が多いことでも有名なので、麻雀界らしい言葉でもあります。

しかし、漢字圏には「玄」の字を「バイ」と読む文化圏はありませんので注意が必要です。

「玄人」の状況別の意味

着物の世界における「玄人」の意味

着物の世界において「玄人」とは、粋筋の方々を指します。粋筋とは、「男女の色恋」という意味の他、花柳界(かりゅうかい)という芸者(芸妓)の世界を表す意味も持っています。今回の場合は、花柳界(かりゅうかい)を指しています。

花柳界(かりゅうかい)の方々は、具体的には三味線でお座敷の宴を盛り上げることを生業としています。京都にいる芸妓を想像すると分かりやすいのですが、お座敷に上がる方々は、みんな着物を着ています。

芸者は着物の衣紋(えもん、襟の部分)を抜いて(大きく開ける)いても着崩れることがありません。そのため着付けの習熟度も併せて着物の世界では「玄人」と表現されることがあります。

女性に使われる場合の「玄人」の意味

上述した中でお気づきの方もいるかもしれませんが、「玄人」を使う相手は女性の場面が多々あります。もちろん、男性にも使える言葉ではありますが、元々の意味が伎芸や技芸を対象とした言葉のため、男性よりも女性に向けられることが多くなっていました。

先ほどは花柳界(かりゅうかい)について紹介しましたが、接待を伴う飲食店やホステス店など、いわゆる「水商売」のような接客業に従事する方を「玄人女性」と言います。男性を喜ばせることに長けていたことから、男の扱いを極めているという意味で「玄人」という言葉が使われました。

花柳界(かりゅうかい)もそうですが、水商売は相手に求められたことをこなし、礼儀作法も弁えている方々の集まりです。いうなれば、接客のプロに当たるため、「玄人」という表現は妥当ではないでしょうか。

あまり使われることはありませんが、「玄人女性には、」現在の使い方では現代でいうところの「夜の蝶」という意味合いがあります。いずれにしても職業差別や女性蔑視に該当する場合がありますので、使用は控えた方がいいのかもしれません。

「玄人さん」とは専門家ではなくその分野に詳しい人のこと

「玄人」とは専門家や、その道に通じている人を指します。中には、「玄人」という言葉に対して「さん」という呼称をつける方がいますが、そういった呼び名が付くことによって俗語的になります。

「専門家」や「プロ」というよりも「その分野に詳しい人」という印象が強い言葉になります。しかし、実際には本来の意味とあまり変わりなく、特に間違いであるということもありません。そのため、「玄人さん」というのは、ただの総称としての扱いになります。

「玄人はだし」の意味とは知識や技能を持ったアマチュアのこと

「玄人」を使った言葉には、「玄人跣」という言葉があります。読み方は「くろうとはだし」で、はだしという漢字には「裸足」がありますが、「玄人はだし」では使用しません。しかし、どちらの漢字も「足に何もはかない状態」という意味は同じものになっています。

「玄人跣」は「玄人(その道の専門家)が裸足で逃げ出すほどの知識や技能を持ったアマチュア」という意味で、プロ顔負けの新人に向ける言葉となります。逆にプロに向かって言うと失礼に当たりますので、「玄人跣」を使う際には相手への見極めが必要です。

玄人の語源は何?

「玄人」の語源は「黒人(くろひと)」です。「白人(しろひと/後の素人)」の対義語として、「黒人(くろひと)」が作られました。その後、「くろひと」が音便化して「くろうと」になり、「玄人」という漢字が充てられました。

元々「玄」という字には、「黒」や「奥深い」という意味があり、「玄」という字を充てることで「奥深く物事に習熟した人」という意味を持つようになりました。他にも、「1つの事柄に集中し、苦労を重ねた人」という意味で、「くろひと」という呼び名ができたという説もありましたが、事実は確認できていません。

「玄人」の使い方と例文

「玄人」は、何かを評価する際に使う場合がほとんどです。しかし、「玄人」の意味が経験に関するもののため、使い方を間違えることで、上から目線になってしまい、相手に不快感を与えてしまう場合があります。使用する際は、使い方に注意する必要があります。

  • この作品は玄人受けしたが、観客動員には至らなかった。
  • この店には玄人向けの商品が取り揃えられている。
  • 彼の論評は玄人はだしで舌を巻く。
  • この生地は玄人好みだ。

「玄人」の言い換え(類義語)

「玄人」という言葉自体、一般生活で使われることはあまりありません。中には、少し堅苦しい印象を持っている方もいるでしょう。しかし、言い換えてみると身近な言葉であることが分かります。ここでは、「玄人」と似た意味の言葉を紹介します。

  • プロ(プロフェッショナルの略称。ある物事を職業として行って、生計を立てている人のこと)
  • 名人(技芸に優れている人。又その分野で評判の高い人のこと)
  • 手練れ(技芸や武芸などに熟達していること。腕きき)専門家(ある特定の学問や事柄を専門に研究、担当してそれに精通している人)
  • 熟練者(ある技術において熟練、熟達した人のこと)

「玄人」の反対語(対義語)

「玄人」の語源でも触れた通り、「玄人」は元々「白人(しろひと)」の対義語として作られた言葉です。そのため、「玄人」の対義語に当たるのは、「白人(しろひと)」であり、現在で言うところの「素人」になります。

「素人」も熟字訓であり、特殊な読み方で「しろうと」と読みます。「しろひと」が音便化されたことで、「しろうと」と読むようになりました。順番的には、「素人」の対義語を作るために「玄人」という言葉が生まれた形となっています。

「白人(しろひと)」は「何色にも染まっておらず、何も経験していない人」からきています。「白人(しろひと)」という言葉ができた平安時代で、白塗りをしているだけで芸ができない人に向けられたとも言われています。

「素人」という漢字が充てられた理由としては、「何も経験していない」=「そのまま」という意味で、「何も手を加えられていない」という意味の「素」という漢字が使われました。

他にも、囲碁にルールに基づいて、上手である上位者は黒・下手である下位者は白の碁石を使うことから、「白」と「黒」で色分けしたとも言われています。

「玄人」と「蔵人」の違いは?

「蔵人(くろうど)」とは、日本における律令制下の令外官(りょうげのかん)の1つで、天皇の秘書の役割を果たしたと言われる官職です。後に、蔵人所(くろうどどころ)が設けられたことで、書類管理や行事・事務・雑務等、全般的に対応する役職となりました。

蔵人所(くろうどどころ)に存在していた役職としては、天皇の食事を用意する係・殿舎を清掃、管理する係・鷹狩用の鷹を飼育、調教する係など、幅広いものが存在していました。

「玄人」とは読み方が似ているので混同してしまいそうですが、意味を調べるとまったく違うものになります。また、「蔵人(くろうど)」と同じ漢字の「蔵人(くらびと)」という言葉があります。「蔵人(くらびと)」は杜氏(とうじ)という集団の中で、日本酒造りをする職人を指します。

「玄人」と「達人」の違いは?

「達」という言葉の意味には、「行きつく」というものが含まれています。そのため、「達人」というのは、「ある分野において極めつくし、極限へ行きついた人」という意味になります。例としては、「逃げ足の達人」や「モノづくりの達人」等、得意分野を伸ばした印象の言葉です。

一方の「玄人」は、「経験を積んだ」という意味と紹介しました。2つの言葉を比べてみると、経験を積んで極めている「達人」の方が上位であることが分かります。大きな違いは「経験」と「極める」という部分になります。

また、他にも「その分野で報酬を受けられるかどうか」という部分での違いもあります。上述しているように、基本的に「玄人」は、仕事や知識を生かして報酬を得る人を指します。しかし、「達人」に関しては、得意分野を極めた人を指しているため、極めた部分に報酬が発生しているかはあまり関係ありません。

「玄人」の英語表現

英語で「玄人」を表す言葉を探していると、直接的に「玄人」を表す言葉はないことが分かりました。英語では「専門家」に近いニュアンスで表現されており、これも熟字訓の特徴なのかもしれません。いくつか「玄人」に当たる英語表現をまとめてみました。

  • an exispert
  • a professionai
  • a specialist

ちなみに、「玄人」が入る言葉で紹介した「玄人跣」に関してもそれらしい言葉はなく、上記で紹介した単語で表せるそうです。また、花柳界の芸者(芸妓)という職業をあらわす場合には、「geisha」と表現ができます。このことから分かるように、芸者(芸妓)が日本らしい職業のため、海外の方に深く親しまれているコンテンツの1つとなっています。

「玄人」の意味と使い方のまとめ

「玄人(くろうと)」の意味と語源、使い方や類義語、対義語、英語表現をご紹介しました。「玄人」は、おもに技芸などに習熟した人という意味ですが、単にその分野の専門家というだけではなく、職業として生計を立てているスペシャリストという意味合いが強い言葉です。また、熟語としても特殊な読み方の言葉なので、読み方をぜひ覚えましょう。英語表現とともに意味や由来、使い方をおさえておくと、日本の文化紹介にもなっていいですよ。